なが~ンのごちゃごちゃ はてな商店街:なが~ン堂

本店からネコ達が人属の記録を持ってきます

黒い点は、静かに紡いでいた

黒猫センターは、
日々いろんな“変な荷物”が届く場所だ。
だが、この日の空気は違っていた。
ざらり──と、何かが擦れる音がした。

黒猫センターの空気が、いつもより重かった。

「なんやこれ……誰が持ち込んだんや」

出入りしている黒猫達に、ざわりと戦慄が走る。

あまりにも異質な
"だらりとした汚そうな物"が受付テーブルに
ぽつん、と置かれている。

「さっき……誰かが運ばれて行ったよな」

「受付嬢が手にしたら卒倒しんだよ」

「そりゃ、酷いな……」

「若年猫の吐き戻しで、
 トイレは大変なことになっとるで」

久しぶりのお祭り騒ぎになっている。
大概の物品をやりとりしている黒猫センターでも、
少しだけ斜めに……
扱いにくい物品だったらしい。たぶん……

なが~んのごちゃごちゃ 黒猫センター の看板

出入り黒猫A:
「これ、どかしてや!
 私の荷物を置かれへんやん」

出入り黒猫B:
「鼻落ちるって、早く引っ込めてや」

皆が不平を言うのだが、
持ち込んだものが誰なのかは言わない。
それは、
なが~ンから持ち込まれた荷物と知っているから……
いろいろと、ネコ達の事情があるらしい。

その荷物がここへ置かれる少し前──。

黒猫は、センター前で仁王立ちしていた。

グルグルにラップされた
"だらりとした汚そうな物"を
しっかり咥えているのだが……
白目をむいている。

口には小さい黒い物が蠢いており、
ハアーハアーと激しい吐息だけが聞こえている。

その吐息にまぎれて、どこか甘い匂いが漏れた。

"美味しそうな匂い"と振り向いた者がいた。
アリクイ族の荷受けトラックの運転手だ。

運転手が見つめた先には、
黒猫が立ちすくんでいた。

虫の生態に詳しいアリクイ族は緊急性を察知し、
黒猫センターへ報告。
咥えていたものは受付へ回され、黒猫は……

ベテラン黒猫(顔をそむけながら):
「凄いな、虫と匂いが大変だ」

荷物を遠手で持ちながら受付へ
持ち込んでもよい荷物なのか透視検査を通す。

そこへ受付嬢が休憩から戻ってきた。

受付:
「なに?臭いわね」

ベテラン黒猫:
「たぶん、なが~ンさんとこの黒猫やと思うねん。
 けったいな荷物咥えて気失っとったわ。」
「荷物を取り上げて、透視検査中やねん。」

受付:
「なが~ンさんとこのなら大丈夫でしょ?」

ベテラン黒猫:
「いや、ちよっと……
 これ、画面を見てみ」

受付:
「虫・・・・・・」

ベテラン黒猫:
「おい。どうした」

黒猫若い衆が呼ばれて受付嬢が奥へ運ばれていく。

ベテラン黒猫:
「このていどの蠢きで倒れてどうする。
 まだまだ若いのう」

仁王立ちの黒猫は……
若い衆達で麻袋に詰められる。
なが~ンさんの物は
麻袋に入れることになっているらしい。たぶん…

アリクイが様子見にやってきた。

アリクイ運転手:
「集配センターでの荷受けが終わったので、
 様子を見に来ました。」

「これ、だいぶん虫が抜けてますよ」
「私は黒アリクイではないので、
 この虫はあつかえませんが、
 ラップを渡してくれたら補強しますよ」

渡されたラップで丁寧に包みなおしながら…

「咥えていた黒猫さんはどうなりました?
 ""に取り憑かれて、
 沢山の毛を抜かれてましたよ」

ベテラン黒猫:
「毛を抜かれていた?」

アリクイ運転手:
「あれっ?知りません?」

「この手の虫は紡く習性が強くて……
 繊維を見つけるとすぐ紡ぎ始めます。
 布を近づけると……ほら、こうして。」

当たり前のように、上着の袖を当てがってみせた。
"サッ"と虫をはたいて淡々と話が続く

「それより、黒猫の虫を逃がさないでください。
 布のようなもので覆えば、
 繊維を紡いて生き残ろうと留まるので。」

しゃべりながらも丁寧なラップを完了

アリクイ運転手:
「密封したら窒息するので穴を開けるのですが…
 こちらで処理される方は、
 舐めるのですが?
 ほじくるのですか?
 手法がわかれば、対処しやすいように穴を開けますよ」

ベテラン黒猫とアリクイの会話は続く。

その結果、このまま受付に放置。
センター長の判断にまかせることになった。

センター長は朝から、
トラ配送センターへ出向いてまだ戻らない。

誰も対処しないまま、
黒猫センターの空気だけが
じわじわと重くなっていく。

そして──  
ようやくセンター長が戻ってきた。

黒猫センターの奥、古い本棚の影から、
センター長がゆっくり姿を現した。

センター長は、
受付テーブルの上に置かれた
“だらりとした汚そうな物”を一瞥しただけで、
眉間に深いしわを寄せた。

センター長:
「まず、各自の安全確認するで。
 この荷物の最終管理者は……君で間違いないな」

ベテラン黒猫:
「はい」

センター長:
「帰ってきたら、
 "けが人がいる"、
 "卒倒した者がいる"と聞いたのだが……」

ベテラン黒猫:
「はい。
 受付嬢が荷物を見つめて倒れました。
 泡を吹いていたので頭を打っている可能性を考え、
 救急車で病院送りにしています。」

「次に……、
 なが~ん本店さんの黒猫が白目むいて気絶——」

センター長(驚きの顔):
「おい!
 今、なが~ンさんところのって言うたな。
 お客さんに迷惑かけとるんか?」

ベテラン黒猫:
「おそらく大丈夫です。たぶん……。
 白目むいて立ったまま気絶していたんですよ。
 虫がたかってまして……
 よそへ虫がうつらないように麻袋にいれて
 裏に放置しています。
 社員にはうつっていません。」

センター長(あきれ顔):
「アホ。
 社員も大事やけど、それよりお客さんが優先や。
 救急隊になんで引き渡してないんや」

ベテラン黒猫:
「救急隊は見てくれたのですが……
 病院で虫が広がるとダメなので連れていけない。
 それどころか、
 虫に関する専門職のところへ
 連れて行けと言われまして……」

センター長:
「何を言うとるんや!
 この荷物は虫の専門家が触っとるやんけ。
 アリクイ族の毛が縫い付けて封印されてる。
 アリクイ救急隊が同行してたんとちゃうんか?」

ベテラン黒猫:
「そのアリクイさんは、お客さんでして……」

センター長:
「あん?
 お客さんに助けてもらっているってことか?」

ベテラン黒猫:
「いえいえ。一般のお客さんではなくて……
 出入り業者という意味での、お客さんでして……」

センター長:
「それ、一緒じゃ。
 他人様に迷惑かけとる。
 それで、この有様と……」

センター長とベテラン黒猫は
現状の確認を長々としている。
あの黒猫のことを忘れたまま……

センター長:
「黒猫救急隊に確認したら、
 受付嬢は病院で意識が戻った。
 アリクイ救急の手配確認をしたら、
 山3つ先から来るので……
 今から4時間後と言いよる」

ベテラン黒猫:
「アリクイ救急は、荷物のために呼ぶのですか?」

センター長:
「荷物……
 違う、違う……
 黒猫や。そや。黒猫や。
 私としたことが黒猫を忘れとった。
 麻袋へ入れたって聞いてたから安心しとったわ」

ベテラン黒猫:
「麻袋でよかったのですか?」

センター長:
「君が麻袋を指示したんとちゃうんか?」

ベテラン黒猫:
「いいえ。私が見たときには
 すでに死体袋となってました。」

センター長:
「でも、結果オーライやな。
 もちろん廃棄するような古い袋に入れているよな」

ベテラン黒猫:
「総務が
 "なが~ンさんとこはコレだから"と
 持ってきたもので……」

センター長とベテラン黒猫:
「…………」

センター長:
「済んでしまったことは、まあええ。
 黒猫を確認しよう。黒猫のところへ案内しろ」

死体袋のような麻袋を、
沈黙の目で見つめる二人。

ベテラン黒猫:
「袋、開けましょうか?」

センター長:
「待て。まだ観察しろ。
 もし黒猫が昇天していたら……
 袋から体液がにじみ出ているはすや」

(間)

「……まだ死んでへん」

ベテラン黒猫:
「死んでへん?……えっ……??」

センター長:
「虫が湧いていたんだよな。
 麻袋に入れてから、虫は出てきてないな。」

ベテラン黒猫:
「はい。虫の閉じ込めに成功してまして、
 受付嬢以外の社員は大丈夫です。」

センター長:
「アホか。お前。
 社員よりお客様の安全第一やろ
 さっきも言うたやろ」

ベテラン黒猫:
「そう言われても……
 黒猫が野垂れ死ぬことはまま——」

センター長:
「だから、お前はアホかというとるんじゃ。
 黒猫約款……いや、それより黒猫条例を思い出せ。
 荷物を運ぶ黒猫は、私ら仲介黒猫と違う。
  "〇▼※?□"の使命で走っとるんや」

ベテラン黒猫:
「えっ?、"マルクロサンカク…"って」

センター長(おでこに怒りマーク):
「あん?
 てめえ、まさか未熟者とちゃうやろな。
 ええ歳こいて、"〇▼※?□" が聞こえへんのか?」

ベテラン黒猫:
「はい。"マルクロサンカク…"って聞こえてますが…」

センター長(大きなため息):
「君のことは後で確認するわ。
 センター作業員を一人呼んで来い。
 作業員ならだれでもええ。
 手ぇ空いてるやつを大至急や」

今まで黒猫を放置していたくせに……
今頃になって黒猫の処遇で慌てるのであった。

センター作業員(顔を洗っているのかナデナデしている):
「こんなとこに呼び出して……どうされました?」

無言で麻袋を指さすセンター長。
死体袋に視線が吸い寄せられるセンター作業員。

センター作業員(驚いている):
「なんで、ここに死体袋があるんすか……?
 死臭が出始めてますよ」

センター長:
「やはりそうか?
 でも体液の滲みだしは見えへんやろ」

センター作業員:
「本当だ。ということは……、
 死後数日たって体液が抜けたものを、
 死体袋に入れて
 誰かがここに放置したってことですか?」

センター長:
「君ならそう見立てるやろ。
 この麻袋には、
 さっきまで動いていた黒猫が入っているんや」

センター作業員:
「動いていた黒猫を……??
 死体袋に……???」

センター長:
「それはいいとして、
 まだ生きているのか?
 これからどうするのか?
 君と方針を決めたいんや」

センター作業員:
「私には匂いから……
 すでにお亡くなりに……
 なっているように見えますが……。
 まだ生きているという前提なんですね。」

センター長:
「そうだ」

センター作業員:
「では、呼吸をしてるかの確認しましょう。
 次に、体温があるかの確認です。
 簡単ですよ。
 袋の中に手を突っ込んで
 鼻と腹部を触るだけです。
 私がすぐ作業しますよ」

センター長:
「待て待て。君にうつったら困るやろ。
 君は我が社の重要戦力なんや」

センター作業員:
「うつるって……。
 やばい伝染病なんですか?
 それなら、
 すぐに保健所を手配したほうがいいですよ」

センター長:
「こやつは"虫"にたかられて白目むいとるんや」

センター作業員:
「"虫"はどんなのですか?
 白い線虫?字虫?タグ虫?泣き虫?
 ……それとも腹の虫?
 わかっていたら教えてください」

センター長:
「私は"虫"を見てへん。
 話を聞いたら……
 荷物から虫が這い出てたかられとる。
 体毛で巣をつくろうとしてたとかで、
 他の猫の毛にうつったらいかんと、
 この状態にされとる」

センター作業員:
「それなら"紡ぎ虫"か"字虫"ですね。
 それで死体袋……
 じゃなかった、麻袋なんですね」

腰の作業カバンをゴソゴソして、
薄くて長いゴム手袋を取り出す。

センター作業員:
「私の体毛が触れないように
 ゴム手して触れば大丈夫です。
 ゴム手越しだと、鼻息の確認は難しいですが、
 体温と脈なら触診できますよ」

センター長:
「そうか。それで頼む」

死体袋じゃなかった。麻袋に手を突っ込む。
空を見上げながら、あちこちを探っている。

センター作業員:
「私のカバンから作業帳を出して、
 私がしゃべることをメモしてください」

無言でセンター作業員の腰袋をまさぐり、
何冊かの帳面を取り出すセンター長。

センター長:
「どの帳面に書き込むんだ」

センター作業員(空からセンター長へ目線が移る):
「重要事項なので、
 ピンク色の帳面にしか書き込めないはずです。
 ほら、センター長の左手……
 ピンク帳面を握っているでしょ」

「今の会話で途切れたので、
 また最初から探りますね」

再び、空の一点を見上げながら麻袋の中をまさぐりはじめた。

センター作業員:
「私のしゃべることを、
 そのまま書き落としてください。
 略語やセンター長の心の声を
 混ぜないでください。
 漢字ではなく、ひらがな、
 もしくはカタカナで書いてください。
 誤字脱字を避けるために、ゆっくりと話します」

「では、
 これから私が唱える言霊を書き綴ってください。
 準備ができたら、
 “唱えなさい”と指示してください」

センター長(緊張の顔で):
「……唱えなさい」


*** センター作業員の祝詞が始まる ***

♪♪♪————

この者の魂は未熟であり、
世の摂理の枠からズレておる。
枠から外れていることにより、
目の輝きが失われ、硬直という形で
世の接点を外している。

体温と呼吸は安定しておるが~~。
沢山の小さい魂~~。
世に認知されたいと形を変えようと努めている。

愛おしく可愛い魂に満ちておる。
小さい魂が大きい魂に助けを求め、
魂が分かれるのを拒んでいる。

たくさんの魂に触れた者は、
それぞれの魂の叫びを受け止め、
魂が生き残る道標を用意しなければならない。

————♪♪♪

*** センター作業員の祝詞が終わる ***


センター作業員:
「大丈夫、生きてますよ。
 私なりに深層心理まで探りを入れたのですが……
 どんなの出ました?
 いつもは助手が丁寧にまとめてくれるんですよ」

センター作業員:
「それと……
 黒猫の首輪に
 手紙と思われるものが括りつけられてました。
 私が触れた限りでは、
 それは私には読み解けない代物だと思います。
 手紙をしたためた方の
 封印が施されているはずです。
 必要な方へ届くようになっているので、
 センター長が管理してください」

手紙をセンター長が受け取ると、金色の字が浮き上がった。

センター作業員:
「あれっ……
 センター長が手にしたら、
 私にも字が見えるようになった」

「センター長宛ての手紙ですね。
 字が見えるってことは……
 私にも読めということでしょうか?」

「その手紙はいいとして、
 先ほど私が読み上げた内容を
 先に見せてもらえますか?」

センター長(意味深な顔):
「そのまま書いたのだけど……
 こんな感じで作業をするのか?」

センター作業員:
「センター長は管理畑ですから、
 私達の心理作業は知らなくて当然ですよ。
 メモを見せてください」

二人してうなづきながらメモの確認をする。

センター作業員:
「センター長。
 私と手を取り合ってアイコンタクトしましょう」

見つめ合う二人の時間がしばらく続く

(間)

手を離してすぐに……

センター作業員:
「次の対処は伝わったと思います。
 専門職手配を間違えると大変なことになるので、
 まずは該当書籍を読んで、
 どの専門職に連絡するか決めてください」

受付の本棚を漁りはじめるセンター長。
多数の書籍から二冊の本に目がとまるのだが……
なぜか左手は、別のところへ伸びて行く。

本棚の隙間から、
古びた薄い冊子を引き抜く。
表紙には、かすれた文字で

<< 寄生虫編 紡ぎ虫・字虫の対処(第64版)>>

と書かれている。

センター長はページをめくりながら、
受付嬢が倒れた理由を静かに理解していく。
黒猫の白目も……これのことだろうな。

センター長:
「……ああ、これは本当にアカンやつや。
 これをまとめているのは……。
 やはり、この手の事案はローサルか……」

書籍の裏には
著者「ローバジェット・ナノ・サルベージ研究所」
と記されている。

すぐに電話を取り出し、
ローサルへ状況を説明する。

センター長:
「……ああ、ローサルか。
 虫が紡いどる。
 黒猫が一匹、白目むいて倒れた。
 ……来れるか?」

電話の向こうで、
ローサルが短く息を呑む音がした。

ローサル研究員(電話越し):
「宿主にされたのは1匹だけか?
 宿主はどうなっとる……」

数回の受け答えをして。

ローサル研究員(電話越し):
「今、研究所は手が離せん。
 代わりに、ロボ“LowSalAI”を向かわせる。
 あいつの指示には絶対に従ってくれ。
 ちょっとアレだけど……
 虫の対処は世界が認めている。
 繰り返すが……
 絶対に“LowSalAI”の指示に従ってくれ、必ず。」

センター長:
「了解や。ロボの指示に従うわ。」


本店大家(ネコ爺)貼り紙棚


 
なが~ン猫たちは仕事が遅いから、お客さんの困りごとも多いやろ。

こんなパッケージを見たいというリクエスト。  
なが~ン達の会話でわからん言葉があったときは、コメントどうぞって書いた連絡箱へメモ入れたらええ。
本店大家が時々確認して、人属の記録パッケージを並べろと意見するぞ。

ただし、ネコ族のことはネコプライバシーがあるので質問不可。

店主より: この棚の管理は面倒だから適当にするよ。


 [只今、空き棚]

 


なが~ン堂:一斗缶連絡箱

(そっと投げ入れていってな)


女神からの独り言

 

 
アクセスランキングはあまり好きではないんだけど
でも、参加して"なが~ン堂"を露出しないと
誰も来てくれないのさ……
だから、アクセスアップ祈願札を貼るけど
札を触った人は、ブログ紹介ページへ飛ばされるのよ。
必ず、戻ってきてね




なが~ン堂:黒い点は、静かに紡いでいた